治療したらどれくらいもちますか?
歯科医師をしていると言われる言葉です。
家電を筆頭に、物には耐久年数というものがあります。
家電ならばおよそ1年。車ならば3年を目安にしているのでしょうか。
でも、そこは日本の技術力。10年たっても壊れないというのが素晴らしいところですね。
ところが、歯科についてはどうでしょうか?
家電や車などとは使われている環境があまりにも違う。例えて言うならば、24時間、365日、海の荒波の中で漕がれている船の耐久年数は?
口腔内での被せ物などは、いつもそこに力が加えられている。その力はおよそ自分の体重分の圧力です。なおかつ、食事をするたびに口の中は酸性に傾きますから、金属が錆びやすく、溶け出す状態になっています。
思ったよりも過酷でしょ!
人によってその状態はもっと悪い人がいます。歯並びが悪いとか、歯ブラシがうまく行えていない方です。
そしてもっとも予測を狂わすのが、正常な歯の本数が無い方です。通常は上下合わせて28本あるのですが、特に奥歯が無い方は、その分の噛む力をどこかの歯が担っていることになる。仕事で例えると、本来5人の従業員が必要なのに、4人しかいない状態です。
これが、1人の病欠による一時的なものでしたら、皆でタッグを組んで、「今日は、忙しいけど頑張ろう」ってことになりますよね。
でも、毎日4人態勢で、5人に従業員が増える気配はない。そうすると全体でのストレスがたまってきて、ある時、1人の従業員が悲鳴を上げてしまいます。
辞めて3人になったら、もっと悲劇。負のサイクルが始まって、全員がいなくなっちゃう可能性もありますよね。
上記と同様で、歯が1本無くなったらからといって、ずぐにその影響が出ることは殆どありません。でも、ストレス蓄積で、どんどん疲れがたまって、ある時、どこかの歯が割れたり、揺れたりするんです。
そうなってからでは、殆ど元の状態に治すのは難しい。
歯が無くなったら入れ歯にすれば良いじゃない!という声も聞こえてきそうですが、入れ歯は天然歯の20%程度しか機能しないと言われています。
職場の話に戻らせていただくと…
4人態勢に応援が来て1人加わった。良かった、これで元の5人態勢だと思っていたら、それが小学生だった…って感じです。あくまで例えですが、口腔内での機能においてはこんな感じなんです。すると、過大な期待はできませんし、いない方が仕事が全体としてスムーズにいくと考える人も出てくる。つまり応援が来ても結局使わなくなってしまう人も多いのです。
お口の中は、髪の毛一本入っただけで違和感を覚えるほど繊細なのに、入れ歯だとさらに気持ちが悪いと言われてしまうのも分かっていただけたでしょうか。
結論として、人によってそれぞれ環境があまりにも違いすぎるので、「何年もちますか?」という問いには答えにくくなっているのです。
しかし、厚生労働省では一つの指針があり、被せ物ならば2年、入れ歯ならば半年が保障期間となります。
短いような気がするかもしれませんが、これが現状となります。
でも、ソニーや日立、そしてトヨタのように安心、そして安全なものを作れるように、色々なことを勉強して、それを臨床に生かしています。